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OpenClawの利用事例 — Mac mini × Slack で作る24時間AIアシスタント
Mac mini M4とSlackを組み合わせたOpenClawの実践的な使い方を、セットアップから日常の活用事例まで紹介します。
はじめに
最近、個人開発やちょっとした自動化に OpenClaw を使い始めました。OpenClawはオープンソースの自律型AIエージェントで、メッセージアプリ経由でPCに指示を出せるのが特徴です。いわゆるチャットボットとは違い、実際にファイル操作やコマンド実行までやってくれます。「動くAI」とでも言いましょうか。いや、動かないAIって何だという話ですが。
この記事では、自分の環境(Mac mini M4 + Slack + Ghostty)でOpenClawをどう使っているか、セットアップから具体的な活用事例まで紹介していきます。
※ 本記事の内容は2026年3月時点の情報です。OpenClawは活発に開発が進んでいるため、バージョンによって手順や仕様が異なる場合があります。
環境
- マシン: Mac mini M4(16GB RAM)
- ターミナル: Ghostty
- チャンネル: Slack(Socket Mode)
- Node.js: v22(Homebrew経由)
Mac mini M4はOpenClawの常時稼働マシンとしてめちゃくちゃ相性がいいです。省電力で静音、Apple Siliconの処理性能も十分。16GBのメモリでも問題なく動いています。「AIを動かすなら最低64GB」みたいな話を見かけますが、あれはローカルLLMの推論を回す場合の話です。OpenClaw自体はAPIを叩く側なので、メモリはそこまで食いません。
ターミナルにはGhosttyを使っています。起動が爆速で、GPU描画(macOSではMetal)のおかげでOpenClawのログが大量に流れても描画が引っかかりません。「ターミナルなんて何でもいいでしょ」と思っていた時期が私にもありました。Ghosttyに乗り換えてからは戻れなくなっています。
※ GhosttyはMitchell Hashimoto氏(Terraform/Vagrantの生みの親)が開発したターミナルエミュレータです。Zigで実装されており、ゼロコンフィグで使えます。
セットアップの流れ
1. 前提ツールのインストール
Homebrewが入っていない場合はまずインストールしましょう。入っている方は読み飛ばしてください。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
Node.js 22以上が必要です。
brew install node@22
※ Apple Silicon(M1〜M4)の場合、Homebrewのインストール後に eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)" をシェル設定に追加する必要があります。忘れると「brewコマンドが見つからない」で詰みます。
2. OpenClawのインストール
npm install -g openclaw
はい、これだけです。拍子抜けするかもしれませんが、本当にこれだけです。大変なのはこの後です。
3. macOSの権限設定
ここが一番のハマりポイントです。システム設定 > プライバシーとセキュリティから、Ghostty(またはお使いのターミナル)に以下の権限を付与する必要があります。
- フルディスクアクセス
- アクセシビリティ
- 画面収録
「フルディスクアクセスって怖くない?」と思った方、正しい感覚です。ただ、OpenClawがファイルを読み書きするには必要な権限なので、ここは覚悟を決めましょう。後述のセキュリティ設定で操作範囲は制限できます。
重要: 権限を変更したらターミナルを必ず再起動してください。再起動しないと反映されません。これに気づかず30分溶かしたのは私です。
4. Slack連携の設定
自分はSlackのSocket Modeで接続しています。HTTP Events APIもありますが、個人利用ならSocket Modeのほうが手軽です。外部にエンドポイントを公開する必要がないので、「自宅サーバーを外から叩けるようにする」みたいな面倒な設定が不要になります。
※ Socket ModeはSlackがWebSocket接続を張りに来る方式です。HTTP Events APIはSlackからHTTPリクエストが飛んでくる方式で、本番環境やスケーラビリティが必要な場合に向いています。
設定の流れ:
- Slack API で新しいAppを作成
- Bot Token Scopes に
chat:write,channels:history,im:historyなどを追加 - Socket Mode を有効化し、App-Level Token を取得
~/.openclaw/openclaw.jsonに設定を記述
{
"channels": {
"slack": {
"appToken": "xapp-...",
"botToken": "xoxb-..."
}
}
}
- OpenClawを起動し、Slackのチャンネルで
/invite @YourBotNameを実行
これでSlackからOpenClawに指示が送れるようになります。初めてメッセージを送って返事が返ってきたときは、ちょっと感動しますよ。すぐ慣れますけど。
メインの活用事例:株の情報収集
さて、ここからが本題です。自分がOpenClawを一番活用しているのは、保有銘柄の情報収集と監視です。
やっていること
スプレッドシートに保有銘柄(銘柄名・コード・株数・取得単価)を入力しておくと、OpenClawが毎日自動で情報を集めてSlackに報告してくれます。新しい銘柄を買ったら、スプレッドシートに追記するだけ。他の設定変更は不要です。
「え、それだけ?」と思うかもしれませんが、この「それだけ」を実現するのがOpenClawの強みです。
自動化のスケジュール
| 時刻 | 処理内容 |
|---|---|
| 6:20 | スプレッドシートからポートフォリオを同期 |
| 毎時:30 | 保有銘柄に関連するニュースを自動収集 |
| 7:00 | 翌日に決算発表がある銘柄を通知 |
| 10:00 / 14:30 | 株価が3%以上変動した銘柄をアラート |
| 17:00 | その日の決算結果を報告 |
| 土曜10:00 | 週次の損益レポートを生成 |
朝起きたらSlackを開くだけ。完全に株の執事です。給料は電気代だけ。優秀ですね。
※ 当然ですが、この仕組みは情報収集の自動化であり、投資判断をAIに委ねているわけではありません。最終的な売買判断は自分で行っています。AIの出力を鵜呑みにして損しても自己責任ですので、そこはご了承ください。
設計のポイント
ここで大事にしているのは、確実に動く必要がある処理はシェルスクリプト、判断や言語化が必要な部分だけLLMに任せるという切り分けです。
- 株価の取得やスプレッドシートの同期 → シェルスクリプト(Yahoo Finance API / Google Sheets API)
- 3%以上の変動があったときの理由調査 → LLMがWeb検索して報告文を生成
LLMにすべてを任せると、たまに幻覚(ハルシネーション)を起こして存在しないニュースを報告してきます。「トヨタがSpaceXを買収」とか言い出したときは笑いました。笑えない人もいると思うので、データ取得部分は愚直にスクリプトで回すのが安全です。
実際のSlack通知の例
朝の時点でSlackに届くメッセージはこんな感じです。
ポートフォリオ日次レポート(3/9)
▼ 注目アラート
・7203(トヨタ自動車)前日比 +3.2%
→ 北米EV戦略の報道が材料視された模様
▼ 明日の決算予定
・4755(楽天グループ)
▼ 関連ニュース(3件)
・日経平均、半導体関連株の上昇で…
・トヨタ、北米でのEV生産計画を…
・楽天モバイル、契約者数が…
スマホでSlackを開くだけで、朝の情報収集が完了します。証券会社のアプリを3つ開いてニュースサイトを巡回していた日々が懐かしいです。
その他の活用事例
GitHub Issue のトリアージ
個人プロジェクトのGitHub Issueを監視して、新しいIssueが立ったら内容を要約してSlackに通知してくれます。
nullstead/homepage リポジトリに新しいIssueが作成されたら、
タイトルと本文の要約をSlackに送って。
ラベルが "bug" の場合は緊急マークをつけて。
OSSプロジェクトを持っている方には特におすすめです。Issueの通知を見逃すことがなくなります。
ファイル操作の代行
シェルスクリプトを書くほどでもない、でも手作業は面倒——そういうタスクにちょうどいいです。
~/Desktop/screenshots にあるPNG画像を全部、
幅800pxにリサイズして ~/Desktop/resized に保存して。
こういう「5分あればできるけど、やりたくない作業」を自然言語で丸投げできるのは最高です。怠惰は美徳。
開発中のサポート
コードを書いているときに、Slackから「このエラーメッセージの意味を調べて」と投げると、ログを読んで原因の候補を返してくれます。Ghosttyの画面とSlackを並べておくと、ペアプログラミングに近い感覚で使えます。相方が文句を言わないのも良いところです。
おすすめスキル
OpenClawはスキル(プラグイン)で機能を拡張できます。ClawHubに3,000以上のスキルがありますが、正直なところ玉石混交です。自分が実際に使っていて信頼できるものだけを紹介します。
| スキル名 | 用途 |
|---|---|
skill-vetting |
新しいスキルを入れる前にセキュリティチェック |
stock-analysis |
米国株・暗号資産の分析とシグナル生成 |
financial-market-analysis |
市場データとニュースを統合したレポート生成 |
apple-reminders |
Appleリマインダーとの連携 |
weather |
天気情報の取得 |
スキルのインストールは1コマンドです。
npx clawhub@latest install skill-vetting
※ skill-vetting だけは最初に入れてください。理由は次のセクションで嫌というほど説明します。
セキュリティについて — ここ大事です
OpenClawは便利ですが、セキュリティ面では2026年に入ってから深刻な問題が複数報告されています。「便利だから使う」で終わらせたくないので、ここはしっかり書きます。長いですがお付き合いください。
報告されている主な脆弱性
CVE-2026-25253(深刻度: 高 / CVSS 8.8)
悪意あるリンクをクリックするだけでリモートコード実行(RCE)が可能になる脆弱性です。OpenClawのControl UIがURLのクエリパラメータを検証せずに信頼してしまい、攻撃者がゲートウェイトークンを窃取できます。平たく言うと、「怪しいリンクを踏んだだけでPCを乗っ取られる」ということです。怖いですね。バージョン2026.1.29で修正済みです。
※ CVSSはCommon Vulnerability Scoring Systemの略で、脆弱性の深刻度を0.0〜10.0で評価する国際標準です。8.8は「High(高)」に分類されます。
CVE-2026-22708(プロンプトインジェクション)
OpenClawがWebページの内容をサニタイズせずにLLMに渡してしまう問題です。攻撃者がCSSで非表示にした悪意ある指示をWebページに仕込むと、OpenClawのエージェントがそれをシステムコマンドとして解釈する可能性があります。人間の目には見えないけどAIには見える——映画みたいな話ですが、現実です。
ClawHubの汚染
2026年2月時点で、ClawHub上のスキルの約12%にマルウェアが含まれていたという調査報告があります。8つに1つがマルウェア入りです。さらに、関連プラットフォーム「Moltbook」から150万件のAPIトークンが漏洩する事件も発生しました。
※ この調査はCiscoのAIセキュリティ研究チームによるものです。「12%」という数字はサードパーティの分析であり、ClawHub公式は対策を進めていますが、現時点でも未検証のスキルが残っている可能性はあります。
インスタンスの露出
インターネットに公開されたOpenClawインスタンスが約14万件確認され、そのうち約35%がRCE脆弱性の影響を受ける状態でした。「誰でもアクセスできるOpenClaw」が14万台。ホラーですね。
自分がやっているセキュリティ対策
怖い話ばかりしてしまいましたが、対策すれば普通に使えます。以下、自分が実際にやっていることを全部書きます。
1. 常に最新バージョンを使う
CVE-2026-25253はバージョン2026.1.29で修正されています。アップデートを怠ると致命的なので、週一で確認しています。
npm update -g openclaw
これをサボる人が14万台の露出問題を生んでいるわけです。お互い気をつけましょう。
2. ゲートウェイの認証設定
デフォルトでは認証なしで動きますが、必ずパスワード認証を有効にしてください。認証なしで動かすのは、玄関の鍵を開けっ放しにしているのと同じです。
{
"gateway": {
"auth": {
"password": "your-strong-password"
}
}
}
※ パスワードは十分な長さ(16文字以上推奨)のランダム文字列を使ってください。「password123」とかやめてくださいね。本当に。
3. サンドボックスの有効化
サンドボックスをオンにして、ファイルシステムのアクセスをワークスペース内に限定します。これにより、OpenClawが操作できるディレクトリが制限され、うっかり /etc/ を書き換えるような事故を防げます。
4. 作業ディレクトリとコマンドの制限
ALLOWED_DIRECTORIES=/Users/username/openclaw-workspace
COMMAND_ALLOWLIST=ls,cat,mkdir,cp,node,npm,curl
全権限を渡さず、必要なコマンドだけをホワイトリストで許可します。「何でもできるAI」は「何でもやらかすAI」の裏返しです。
5. スキルの事前審査
skill-vetting でスキルのコードを検証してからインストールします。前述の通り、ClawHub上のスキルの12%が汚染されていたという報告があります。「人気だから安全」とは限りません。
6. ネットワークの制限
外部にゲートウェイを公開しません。自分はSocket Mode(Slackが接続を張りに来る方式)なので、インバウンドのポートを開ける必要がありません。これだけで14万件の露出問題とは無縁になります。
※ どうしても外部からアクセスしたい場合は、Tailscale等のVPN経由にすることを強くおすすめします。
7. API利用額の上限設定
LLMのAPI呼び出しに上限を設定しておきます。万が一プロンプトインジェクション等でエージェントが暴走しても、課金が青天井にならないようにするためです。月の上限を決めておけば、最悪の場合でも被害額に天井があります。お財布のセキュリティも大事です。
セキュリティに対する所感
正直なところ、OpenClawのセキュリティは「成熟している」とは言えない段階です。しかし、上記の対策を施した上で個人利用する分には、リスクは許容範囲だと考えています。
ポイントは 「外部に公開しない」「権限を最小限にする」「スキルを盲目的に信頼しない」 の3点です。逆にこれを怠ると、PCを丸ごと乗っ取られるリスクがあります。便利さとセキュリティはトレードオフなので、ご自身のリスク許容度に合わせて設定してください。
「全部対策するのは面倒」という方は、最低でも1(アップデート)と2(認証)だけはやってください。この2つだけで、報告されている攻撃の大半を防げます。
まとめ
OpenClawは「AIが実際にタスクをこなしてくれる」という体験を手軽に実現できるツールです。特にMac mini + Slackの組み合わせは、24時間動くパーソナルアシスタントとしてかなり実用的だと感じています。
自分の場合は株の情報収集が最大の用途で、毎朝Slackを開くだけでポートフォリオの状況が把握できる環境は、一度作ると手放せません。
一方でセキュリティの課題は無視できません。CVEの報告やClawHubの汚染問題など、2026年に入ってからリスクが顕在化しています。「便利だから全部任せる」ではなく、権限を絞り、最新版を維持し、スキルを検証する——この姿勢で使えば、現時点では十分実用に耐えると感じています。
気になった方はまず公式ドキュメントを見てみてください。セットアップだけなら30分もかかりません。セキュリティ設定に30分、合計1時間で「うちにもAI執事がいる」状態になれます。